【映画】延安の娘  池谷薫監督

中国の文革物(そんなジャンルあるのか?)のドキュメンタリー。

文革で下放された青年の娘が、
生まれて初めて実の親に会いに行くという映画である。
「ワイルド・スワン」とか、小説やノンフィクションで翻訳されている文革中の話って、
知識階級が下放された話が多くて、その後名誉回復している場合が多い。
でも、今回出てきたのは、紅衛兵として「革命」に参加して、
「革命的行為」として下放された、当時中学生くらいだった人の話だ。
いわば普通の人の話だ。
今、50才くらいになるのさ。

文革後、北京に戻った人も多い中、帰らなかった人もいる。
そういう人たちにも、知識階級に劣らないほどのドラマがある。
でも、その苦悩が誰にも共感も共有もしてもらえず、
恵まれた生活もしていない「普通の人々」は、
自分の人生をどう総括するのだろう?

主人公になっているのは、
下放中に同志の女の子との間に、子どもが出来たが、
男女交際は厳禁だったため、
子どもを地元の農家に置いてきた男である。
相手の女性とはすぐに別れて、
今は北京で生活保護を受けながら妻と二人暮らしをしている。
その娘は、自分が下放青年の娘だと知って、
実の親を探し出すのだ。

娘の海霞は、まだ21才くらいなのに、
顔は日に焼けて、しわだらけなの。
すごいおばさんに見えるの。
この子も北京で生まれていたらなぁ、
別の人生を送っただろうになぁ。

父親は、生活保護を受けている自分を恥じて、
「会っても、洋服一枚買ってやれない、メンツがたたない」と言って、
最初は、会うことを拒否する。
ほら、中国で「メンツがたたない」って言ったら、もう絶対だから。
それでも、同じ下放仲間がカンパをして、
娘の電車代、お土産代を捻出する。
でも、別の家庭を持っている母親は、
とうとう姿を現さなかった。

目のつけどころはいいと思うんだよ。
でもね、これを映画だと言われるのは、
正直、抵抗がある。
NHKが制作しているだけあって、
NHKのドキュメンタリーの手法なんだよね。
つまり、だれにも肩入れせず、
何人もの人に対して同じスタンスで、
「この人はこう、この人はこう」って、
事例を挙げていくだけなの。
教養として、「あ、わかりました」って気にはなるけど、
魅力はないよね、映画としての。

海霞の視点で、自分がなぜ生まれたかということを
解明していってもよかったと思うし、
なんかもっと、人間を扱うなら、人間くさく扱わないとさ。

宣伝文句には「ワイルド・スワン」「大地の子」が引き合いに出されてるけど、
それは、持ち上げすぎだろうて。

こういうハードな人生に、希望を見出そうとする人間は好きよ。
だから、そういう人生をフィルムに収めるためには、
もっと、ガチンコ勝負でつきあえよ!

なんか、せっかく、こういうドキュメンタリーでこそ、
スポットを当てるべき人を見つけだしたのに、
その手法が甘いって、ちっ、もったいないって感じ。

でも、上海の88階で働くホワイトカラーだけが、
現代中国でないことを知るためには、
見て損はない。




この記事へのコメント

KIYO
2004年05月11日 15:43
はじめまして。私もアジア映画が大好きなので、度々こちらをチェックさせていただいています。トニー・レオン関係の記事が多いのもいいですね♪「延安の娘」、私も映画祭で見ました。目の付け所は良いと思うのですが、ちょっと退屈な感じはしました。しかし、巷では絶賛されているようですね。アジアさんの意見、同感です。もうちょっと映画としても見どころが欲しかったですね。
アジア映画、大好き!
2004年05月11日 21:45
KIYOさん、こんにちは。この作品、ご覧になったんですね。確かに、この映画、あっちこっちの映画祭で上映されているみたい。でも、ポリティカリーコレクトであることと作品としておもしろいかということは、別ですものね。作り手には、この映画に登場した人たちの人生をもっともっとしっかり受け止めてあげて欲しかったと思います。ぼちぼち続けていきますので、また読んで下さいね。

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